JOURNAL

建築家視点の土地選び

「土地選びから家を建てよう」と思われている方はもちろん、
「将来的には考えているけどまだまだ先、、」
という方にもぜひ読んでもらいたいです。
家づくりが始まるとあっという間に時間が過ぎてしまいます。
その前から知識をもっている事で、余裕を持って家づくりができると思います。

1.土地選びから建築家に入ってもらう
「この土地が自分たちに合っているのか分からない。」
「この建ぺい率と容積率でどれぐらいの建物が建てられるのかな。」
土地を持っていない方が家づくりをはじめると、わからない事もたくさん出てくるだろうと思います。
不動産屋さんは土地の専門家なので、土地の事を教えてもらうことはできますが、
設計の専門家ではないので、その先の設計のことになると不安です。
そこで、土地を買ったその先を見据えて、土地選びから設計の専門家である建築家に入ってもらうことで、「建築家」は「不動産屋さん」と「クライアント」の繋ぎ役になってくれます。

2.総予算から土地と建物に掛けるバランスを決める
「土地にこれだけかかったから、残りで建物を建てよう。」と、
土地を優先して考えてしまうと、肝心の建物が貧しいものになってしまいます。
(中古住宅や中古マンションを購入して改装したいと思っている方も同じです。)
家づくりには必ず予算があります。その中で土地と建物のバランス、土地選びの優先順位を一緒に考えるのも建築家の仕事です。
大切なのは、建物の大まかなイメージを建築家と共有しながら土地を選ぶ事です。
例えば、「この土地だったら、こっちの方角から気持ちのいい風が流れてくるから、窓はこちらにとればいいですね。でも隣の家の窓とバッティングするから、このように窓をずらすことでプライバシーも守れますし風通しの良い家が建てられます。」といったことや、「ここは理想の駅近ですが、土地が狭いですね。でも建物をこういうふうに建てれば、立体的な面積以上の広がりのある家が建てられますね。」といったように、建物のイメージを伝えてもらう事ができます。
不動産屋さんは土地のスペシャリスト。
建築家は土地を見て建物をイメージできるスペシャリストなのです。

3.土地の隠れた価値を見つけ出す
建築家でなくても、ハウスメーカーや工務店も土地探しから相談はできます。
ただ、ハウスメーカーや大半の工務店は真っ平らな土地にしか自社の建物を建てる事はできないので、必然的に真っ平らな土地を選ぶことになります。
真っ平らな土地は、整地したり、造成するのにとても大きなコストをかけているのでどうしても高価になっていまします。
しかし、家は真っ平らでなくても建てられる事はできますし、むしろ真っ平らではない方が魅力のある建物が建てられる場合が多いです。柔軟で自由に思考できる建築家は、気づかない魅力を見つけ出し、価値に変える事ができるのです。

4.土地も建物と同様設計対象です
ここでひとつ私の設計した「蛙股池の家」の例をご紹介したいと思います。
最寄り駅から徒歩10分にも関わらず、一方を森に面し、一方を池に面している自然豊かな土地が見つかりました。

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不動産屋さんからは、「池に面した2辺の既存擁壁が2段擁壁という違法状態となっているので、家を建てる時にはこの擁壁を造り変えないといけないです。」と言われたそうです。
こんな自然豊かな好立地なのに、安く売りに出されていた理由は、擁壁を造り変えるのに1500万ほどかかってしまうからでした。

不動産屋さんも、数年前から売りに出されていたにも関わらず売れないので悩んでおられました。
この土地を見た私は、既存の下部擁壁の強度は構造設計者と安全性を確認した上で、上部コンクリートブロック擁壁だけを撤去し合法化することで、下部擁壁をそのまま残して利用し、擁壁際から建物までを斜面にして建物と緩やかに繋げるという提案をしました。

結果、周辺の土地相場の半額(擁壁を造り変える費用をかけずに)で土地を手に入れ、周囲の自然環境と緩やかに繋がる家を建てる事ができました。
このように、土地は与えられるだけのものではなく、土地自体も設計することが可能です。
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↑完成から2年経った今では、斜面は緑で覆われ周囲の土手と緩やかに繋がり、緑の中に家が建っているように感じられます。

5.さいごに
自分で土地探し → 設計者探し
ではなく、
設計者探し → いっしょに土地探し
というベクトルで考えてみましょう。
そして、一般に家を作ろうと思い始めるより少し前から、建築家に相談し始めるのが理想です。
建物の設計と同じぐらい、土地選びも大切です。
よい土地がみつかりますように。