北白川の家

House in Kitashirakawa

生きるための家

現代の暮らしは高度化・分業化が進み、住まいもまた専門性の高いものとなっている。かつて民家は、身近な素材でつくられ、
不具合があれば自ら手を入れて修繕していた。
この住宅では、建築に対する暮らし手の主体性を取り戻すことをテーマとし、「自分の手で扱える建築」を目指した。
本計画は、京都市内で陶芸工房と住まいを別々に構えていた夫婦が、生活と制作の場を一体化させたいという思いから始まった。
クライアントが抱いていたのは、明確な理想や夢ではなく、「日々の暮らしを穏やかに営みたい」という率直で等身大の想い。
それは、過度な意匠や演出ではなく、生きるための場所としての家を求める姿勢であった。

北白川の家

1階を陶芸工房、2階を居住空間とした一室空間。
1階の窯の熱を、冬場は2階の居住空間を暖めるエネルギーとして利用する試み。

北白川の家

階高は抑えながら落ち着くヒューマンスケールとした。1階はポリカーボネートで覆われた
工房。2階はゆっくりと過ごせる巣の中のような住居。

北白川の家

外観は、町工場のような素朴な佇まい。1階には既製のアルミサッシを用い、2階の住居部分では、騒音を遮るため開口部を最小限に抑えた。
京都市景観条例に素直に従った形とし、周囲から突出した意匠とならないようにした。

北白川の家

前面道路側1階サッシは窯の搬出入できるよう全開放できる店舗用アルミサッシとしている。

北白川の家

木構造は、複雑な仕口を使わず、ボルトやビスによるシンプルな接合とした。杉材と挟み梁工法により、素人でも組み立てが可能な構造を目指している。将来的な修理や改修も容易で、建築が住まい手に開かれた存在となっている。

北白川の家

この建築は、単なるローコスト化や演出としての「粗さ」ではない。住まい手が関わり、手を加えながら使い続けていける建築。
高齢化や職人不足が進む社会において、すべてを専門家任せにするのではなく、自分たちで少しずつスキルと方法を身につけてながら、自分たちの手で修理し、育てていける家。

北白川の家

表し仕上げが「ローコスト風」としてファッション化される現状に対し、あくまで下地であるという前提に立ち返っている。
端材の再利用や、手に入りやすい材料を活用するなど、即興性を大切にしながら、建築家と施工者が対話し、柔軟に対応する現場づくりを行った。
その結果、工期の短縮と同時に、現場の生々しさが空間に現れている。

北白川の家

「ラフでローテク」な建築には、自由と余白がある。
その余白には、建築に対する愛着や希望が残されているのではないだろうか。

北白川の家