G町の立体廻廊

Corridor of G-cho

線的に広がりをつくる

丁寧にメンテナンスしながら住み継がれていた築100年の農家住宅を、あらたに2世代3人が加わり、4世代5人家族が同居するための改修計画。
まず、昭和期にリフォームされた窮屈な部屋割りを撤去、吹き抜けを設け、みんなが集まれる広いダイニングキッチンスペースに変えました。各室は間取りを踏襲、既存壁床を耐震補強し丁寧なリフォームをおこないました。加えて、かつて畑や遊び場として活用されていた裏庭を再び使える庭に戻しました。
次にそれらバラバラの場所を1本の動線でスムーズにつないでいきます。
具体的には、急勾配だった階段は、緩やかな階段に作り変え1階と2階をつなぎました。既存の柱や梁をかわしながら、緩やかなスロープでぐるりとまわり2階の各室への動線をつくりました。さらに2階窓から飛び出し裏庭へ延長しました。
引き伸ばされた動線よって、多方向に視線が展開し、人と空気が流れ、多世代が住むに見合う距離をつくり、家と敷地全体が伸び伸びと使われる状態へと変わりました。
本計画は、面的に空間をつくっていく方法ではなく、すでにそこにある空間を繋ぐのか、近づけるのか、または離すのかといったように距離を再構成することで、線的に広がりをつくるリノベーション手法です。

G町の立体廻廊

2人並んで作業ができる全長3.6メートルのキッチンカウンター。側面はモールテックス仕上げでオブジェのように作りました。上部にはシルバーの廻廊が浮かんでいます。

G町の立体廻廊

廻廊は光を反射し、暗くなりがちな1階をシルバーで鈍く照らします。

G町の立体廻廊

もともと小割りになっていた間取りの壁と天井撤去し開放的な空間に変えました。キッチンから、ダイニング、奥の和室、さらに外の庭へと視線が抜けます。

G町の立体廻廊

和室は既存を尊重し綺麗に仕上げ直し、窓は庭を眺め寛げるように木製枠と大判のガラスに入れ替えました。

G町の立体廻廊

廻廊は緩やかなスロープでぐるりとまわり、各個室へのアクセス動線をつくります。

G町の立体廻廊

廻廊の構造は、60mm×60mmのスチール角パイプ13本を並べボルトで束ねて一体化。最大支点間5.5Mを無柱でスパンを飛ばしています。

G町の立体廻廊

廻廊と床にスキマが生まれ1階と緩やかに繋がります。

G町の立体廻廊

窓を開けると同じ意匠の廻廊が外まで続いています。

G町の立体廻廊

外部の廻廊は室内と同じ材料、同じ仕上げですが、表面のみ滑り止めとして硅砂を散布しています。

G町の立体廻廊

裏庭と2階が相互に繋がる事で、裏庭はより積極的に活用できる環境へと変わります。

G町の立体廻廊

スチール角パイプは既製長さ6メートルをそのまま使い、瓦屋根を飛び越え裏庭へ架け渡します。

G町の立体廻廊

長年放置されていました裏庭は芝生を張り、様々に活用できるプライベートガーデンとして復活しました。

G町の立体廻廊

掲載
  • 新建築住宅特集2021年5月号
  • 新建築住宅特集2020年1月号
  • SD2019年鹿島出版会
受賞
  • SD Review 2019
  • 第4回日本建築設計学会賞 現地審査対象作品 審査委員:五十嵐太郎
  • 第4回日本建築設計学会賞 会員投票対象作品 審査委員:竹山聖 古谷誠章 五十嵐太郎 倉方俊輔