OPEN DOOR APARTMENT2

街に開かれたシェアハウス

既存のカフェ併設シェアハウスの隣に、同オーナーの新築シェアハウスを設計しました。既存シェアハウスと外観を揃え、既存の緑豊かな庭と繋げるような植栽スペースをつくり街並みとしての連続性をつくりました。建物間を共有のアプローチに作り変え、1階部分を全開できるガラス窓にし、開かれたコミュニケーションの場をつくりだしました。
ガラスに包まれた1階の明るい土間空間は、既存シェアハウスの住人も気兼ねなく利用し、食卓を囲んだり、卓球大会を開催したりと、交流を深める場となっています。さらに住人同士で地域を巻き込んだイベントを企画するなど、創造性を発信する場にもなっています。建物の端から端までを使った緩やかな階段は、空間の中の余白であり暮らしの中でゆとりを生み出します。
住戸は天井の高い1階のプライベートリビングと2階のベッドルームのメゾネット形式となっています。住戸の1階から2階への行き来は、住戸の中のハシゴを使う「最短の動線」の他、緩やかな階段を使う「最長の動線」の2種類があります。「最短の動線」では天井の高い井戸のような空間と、屋根裏のような空間を瞬時に行き来し、巣の中に住んでいるような体感が生まれます。「最長の動線」では、一旦街へ出るような感覚で解放感な共有空間に出て、緩やかな階段を通り、少し離れた場所に自分の「離れ」をもっているような体験が生まれます。
こうして住戸の配列と階段の関係をみていると昔の「木賃アパート」のようですが、閉じられた空間ではなく、人々が流動的に活動し街に開かれた「現代の木賃アパート」としての佇まいになっています。

OPEN DOOR APARTMENT2

左側が既存のカフェ併設シェアハウス。新築シェアハウスはガルバリウム鋼板で覆われた個室、ガラス面が共有空間で、内部の用途が建物の立面に表れています。
間は両建物の共有アプローチです。

OPEN DOOR APARTMENT2

ガラス越しに、木の構造躯体が透けて見えます。

OPEN DOOR APARTMENT2

ガラス面は透過するだけでなく、周囲の風景を反射して映し出します。

OPEN DOOR APARTMENT2

共有空間は2層吹き抜けの明るく開放的な空間です。住人が自由な使い方を想像できる未完成のようなインテリアです。

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木の構造躯体がそのまま表れています。木の梁から照明や階段が吊られています。

OPEN DOOR APARTMENT2

2階の共有リビングと1階の共有スペースが吹き抜けを介してコミュニケーションが生まれます。

OPEN DOOR APARTMENT2

1階に比べプライベート色の強い天井高さを抑えた共有リビング。個室への扉が並列しています。

OPEN DOOR APARTMENT2

間仕切壁の中はトイレ、洗濯機、収納などが納められており、ところどころが開くように扉になっています。

OPEN DOOR APARTMENT2

シルバーの壁は周囲の風景を柔らかく反射します。

OPEN DOOR APARTMENT2

1階の個室はコンパクトながら天井の高い空間になっています。2階の個室へは既製のアルミ製ハシゴで行き来します。
ラワン合板の壁に絵や棚などを取り付け、自由な使い方を許容します。

OPEN DOOR APARTMENT2

2階は小屋裏のようなベッドルーム。全面が窓になっており明るく開放的です。

OPEN DOOR APARTMENT2

廊下の片方はトイレやシャワールームなどの扉が並び、片方は個室の扉が並びます。全て同じ素材の扉は住人だけが分かるものになっています。

OPEN DOOR APARTMENT2

共有部の壁は中空ポリカーボネート。柔らかく拡散した光が充満します。

OPEN DOOR APARTMENT2

中の活動は外からも賑わいを感じられます。活動的で賑やかなシェアハウスになることを願っています。

OPEN DOOR APARTMENT2

掲載
  • 新建築2019年8月号
  • sequences bois  No127 Septembre 2020 (France)