既存のカフェ併設シェアハウスの隣に、同オーナーの新築シェアハウスを設計しました。既存シェアハウスと外観を揃え、既存の緑豊かな庭と繋げるような植栽スペースをつくり街並みとしての連続性をつくりました。建物間を共有のアプローチに作り変え、1階部分を全開できるガラス窓にし、開かれたコミュニケーションの場をつくりだしました。 ガラスに包まれた1階の明るい土間空間は、既存シェアハウスの住人も気兼ねなく利用し、食卓を囲んだり、卓球大会を開催したりと、交流を深める場となっています。さらに住人同士で地域を巻き込んだイベントを企画するなど、創造性を発信する場にもなっています。建物の端から端までを使った緩やかな階段は、空間の中の余白であり暮らしの中でゆとりを生み出します。 住戸は天井の高い1階のプライベートリビングと2階のベッドルームのメゾネット形式となっています。住戸の1階から2階への行き来は、住戸の中のハシゴを使う「最短の動線」の他、緩やかな階段を使う「最長の動線」の2種類があります。「最短の動線」では天井の高い井戸のような空間と、屋根裏のような空間を瞬時に行き来し、巣の中に住んでいるような体感が生まれます。「最長の動線」では、一旦街へ出るような感覚で解放感な共有空間に出て、緩やかな階段を通り、少し離れた場所に自分の「離れ」をもっているような体験が生まれます。 こうして住戸の配列と階段の関係をみていると昔の「木賃アパート」のようですが、閉じられた空間ではなく、人々が流動的に活動し街に開かれた「現代の木賃アパート」としての佇まいになっています。