宇治川のほとりに工房と茶室のあるショップを持たれている陶芸作家と家族のための家です。 開かれたショップとは対照的に、親しい友人を招くことのできるプライベート性の高い茶室と住宅を希望されました。 敷地を縦半分に割り、半分にプライベートな諸室(茶室、水周り、LDK、寝室)を配置。 もう半分は高さ8.5m(3層分)の吹き抜けとし、壁を傾けると、三角形のとても細長いプロポーションの空間になりました。 縦方向にできるだけ奥行きをつくることで、小さい建物ながら無限の広がりを感じられるようにしました。 この家は、ローコスト、準防火地域、フラット35という厳しい制約がありました。 それら制約をクリアするために内部は一般的な石膏ボード+クロス貼り、開口部面積制限によるハイサイドライト、最低床面積基準により3階建てを選択しました。 一つ一つの選択を積み重ねてできた空間は、単純なカタチだけど総体としてみると何を根拠にできたのか分からなくなるような不思議なものになりました。 それは一つの意味しかもたない単純さではなく、すごく単純なカタチのなかにたくさんの意味が内包しているように感じられる空間です。 あらゆるものごとが意味で埋め尽くされ、説明可能なことが正義とされる世界に、ぽっかりあいた不思議な状態があり続けることは贅沢だと思います。