宇治の家

House in Uji

ぽっかりと空いた不思議な空間

宇治川のほとりに工房と茶室のあるショップを持たれている陶芸作家と家族のための家です。
開かれたショップとは対照的に、親しい友人を招くことのできるプライベート性の高い茶室と住宅を希望されました。
敷地を縦半分に割り、半分にプライベートな諸室(茶室、水周り、LDK、寝室)を配置。
もう半分は高さ8.5m(3層分)の吹き抜けとし、壁を傾けると、三角形のとても細長いプロポーションの空間になりました。
縦方向にできるだけ奥行きをつくることで、小さい建物ながら無限の広がりを感じられるようにしました。
この家は、ローコスト、準防火地域、フラット35という厳しい制約がありました。
それら制約をクリアするために内部は一般的な石膏ボード+クロス貼り、開口部面積制限によるハイサイドライト、最低床面積基準により3階建てを選択しました。
一つ一つの選択を積み重ねてできた空間は、単純なカタチだけど総体としてみると何を根拠にできたのか分からなくなるような不思議なものになりました。
それは一つの意味しかもたない単純さではなく、すごく単純なカタチのなかにたくさんの意味が内包しているように感じられる空間です。
あらゆるものごとが意味で埋め尽くされ、説明可能なことが正義とされる世界に、ぽっかりあいた不思議な状態があり続けることは贅沢だと思います。

宇治の家

周辺は3階建の建物が建て込んでいる一画の小さな敷地に対して、プライベート性を持たせた閉鎖的な外観をつくっています。

宇治の家

天に消えるように縦に伸び、光に満たされた静寂な空間は訪れる人や住人にとって特別な経験になります。

宇治の家

普通だととても暗くなってしまう1階まで光が差し、路地ギャラリーに飾られる器やお花が自然光に照らされます。

宇治の家

暗い空間から光で満たされた明るい空間の対比が生まれます。

宇治の家

床、壁、天井全て和紙貼りの茶室。ミニマルなインテリアは緊張感を生むと同時に、和紙によって柔らかい印象も同居しています。

宇治の家

傾いた壁はレフ板や日時計のように太陽や天候の移り変わりを映し出します。

宇治の家

斜壁の上部をアールにすることで、光が舐めるように壁面を伝います。

宇治の家

傾いた壁は外壁では大きな面積として現れますが、傾いていることで周囲への圧迫感を軽減しながら、隣地駐車場の騒音を遮蔽する役割を担い、室内に静けさをもたらしています。

宇治の家

遠景まで望める開けた方角には大きな窓を設けて視線が遠くまで抜けます。

宇治の家

掲載
  • 新建築住宅特集2023年04月号