蛙股池の家

House in Kaerumataike

床のリズムがつくる多様な場

池のほとりに建つ住宅です。
敷地は、北は池に面し、東は空き地を挟んで住宅地、西は前面道路を挟んで森が広がっていました。
敷地の外周には既存の2段擁壁(違法状態)があったので、上部のコンクリートブロックを撤去し2段擁壁を解消し、下部の既存擁壁を再利用しました。
建物と既存擁壁のあいだには斜面をつくり、現在では斜面全体が下草に覆われ周囲の土手と連続した風景をつくっています。
内部は、6枚の床を螺旋状に浮かべています。
1階では、6枚の床ごとに全て天井の高さが異なります。
水廻り→リビング→ダイニング→キッチンの順に天井が高くなり、リビングではくつろぐ、ダイニングでは座る、キッチンでは立つという、姿勢の状態にたいして心地よい天井高をつくりだしています。
水平連窓がぐるりとまわる2階では、6枚の床ごとに全て窓の高さが異なります。
寝室→子供部屋→バルコニー→セカンドリビングの順にハイサイドライトから腰窓へと高さが変化します。
寝室、子供室は東側住宅地からの視線を遮るハイサイドライト、バルコニーでは北側の池を望む事ができる手摺壁の高さ、セカンドリビングでは西側の森を間近に感じられる大きな腰窓といったように、それぞれの部屋と外部の環境に見合った窓の高さをつくりだしています。
この計画では床の高さを変数としてあつかう事で、1階と2階の間取り、さらに外部との関係を同時に解こうと考えました。

蛙股池の家

駅から徒歩10分程度ながら、池と森に囲まれた自然豊かな住宅地です。

蛙股池の家

屋根の形と外壁や壁の色彩は風致地区に合わせ、周囲と馴染むように配慮しています。
大きなガラス開口部から自然豊かな環境を積極的に取り込みます。

蛙股池の家

外壁はガルバリウム鋼板波板。屋根はガルバリウム鋼板立ハゼ。FIX窓は眺望を遮らないように細いスチール枠で作っています。

蛙股池の家

全面道路から家へのアプローチ。DIYで平板を敷いたり植樹などをおこなっています。
玄関扉はスプルス材、庇はスチールプレートで控えめな印象です。

蛙股池の家

天井の高い明るい玄関。段差を砂埃が入らない程度に抑え、室内の土間と繋がっています。
壁は薄塗り漆喰、木部はシナ材で統一しミニマルなインテリアです。

蛙股池の家

手前からキッチン、ダイニング、小上がりの畳敷リビング。奥の水平窓からは朝日が差し込みます。

蛙股池の家

奥の水平窓は外からの視線を気にせず、森の木々を感じられるハイサイドライトになっています。
スチール脚とシナ材のダイニングテーブルは空間に合わせてオリジナルで制作。
ベンチは池への眺望を遮らないように窓の高さと揃えています。

蛙股池の家

構造の工夫により室内は無柱とし、梁から吊られたスチール階段や天井まで達しない高さの家具にすることで、広がりの感じられる空間になっています。

蛙股池の家

螺旋状に全て高さの異なる床は、1階では多様な室内風景をつくり、2階では多様な眺望や視線をコントロールしています。

蛙股池の家

階段を折り返して登った一番奥の部屋は離れのようなセカンドリビングです。
左側の木製階段はこもれる小屋裏へと続きます。

蛙股池の家

階段に廊下の役割をもたせることで、階段から直接、寝室、子ども部屋、バルコニー、書斎へ入ることができます。

蛙股池の家

森と池側に開かれたセカンドリビング。

蛙股池の家

空間に合わせて制作した壁面本棚。
カウンターテーブルと窓までの高さは文庫本サイズに合わせ、森への眺めを遮らないように配慮しています。

蛙股池の家

ツリーハウスのように森を間近に感じられます。

蛙股池の家

モルタル仕上げの洗面カウンターと水平窓と合わせた横長の鏡。朝日を感じながら顔を洗える東側に位置しています。

蛙股池の家

2階の床面が照明に照らされ浮かび上がります。

蛙股池の家

現在、斜面は下草に覆われ周囲の土手と連続した風景を作り出しています。

蛙股池の家

温もりのある昼光色の照明。外の眺めを望めない夜間はカーテンを閉じることでプライバシーを確保します。

蛙股池の家

掲載
  • HOUSING by SUUMO 2022年2月号
  • 新建築住宅特集2017年11月号
受賞
  • 奈良県景観デザイン賞2018ランドスケープ賞 審査委員長:長坂大